５丁目のたる猫

会社で同僚とおしゃべりしながら、
長い髪を指でといていると、
１本の白髪が指に絡まって抜けた。

「え！白髪じゃん。しかもすごく太い！」
こんな立派な白髪が生えるとは、
こう見えて、かなりのストレスをためているのかしら？

そんなことを思いつつ、ボーっと抜けた白髪を見てみると、
髪の根元の部分が枝毛のように分かれており、
毛先はなぜか丸い。

「なんじゃこりゃ？」

指で潰すと汁が出て繊維状になった。

「これって、もしかして、もしかするとエノキダケ？」

そう、私の頭に長い長いエノキダケが生えていたのだ。
エノキダケの抜けた頭皮に指をやると、
そこは腫れあがっており、チクチク痛む。

しかし、こんな非常事態にも冷静な私。
エノキダケをマウスの横に置き、
ネットで”頭からキノコの生える”症例を検索してみた。

すると・・・・なんと新手の詐欺事件でヒット。

高額な「毛生え薬」を購入し、塗布してから数日すると、
髪ではなくキノコが生えてくるという。

もともとはイギリスから始まった詐欺で、
栗毛の人が多いイギリスでは、
頭から「ナメタケ」が生えるらしい。

でも、おかしいんじゃない？

だって、私はハゲていないし、薬なんて必要ない。
私は更に検索をつづけ、国内の被害者マップを発見した。
そのサイトによると、国内での被害者はまだ少なく、
被害者マップには荒川区と品川区だけに印が付いていた。

「荒川区・・・・・！」

私は思い出した。

「そうだ！私は荒川区の安いビジネスホテルに泊まった！」

きっと枕に付いていた薬が、私の頭についてしまったに違いない。

あぁ、頭からキノコが生えるなんて・・・
保険は適用されるのかしら？
頭から生えたキノコって食べれるのかしら？
これって、ちょっとした「冬虫夏草」なんじゃない？。
「冬虫夏草」って虫の体に寄生した菌が虫の体を食いつくし、
夏に体を突き破ってキノコを生やすのよね。

マジでー？私どうなるのー？


っと真剣に悩んでいたら目が覚めた。